ちょっとした考え事



 ただ狩るだけの日々に飽きた。

 ただ狩られるだけの日々に飽きた。

 だから、私はここに居るのかしら……




「あ、お嬢様。ここに居ましたか」

「あら咲夜、今日は起こしに来るのが遅くないかしら?」

「何言ってるんですか。いつもどおり起こしにいったら、お嬢様が居なくて探してたんじゃないですか」

「そうだっけ?」

「そうですよ」




「……ねえ、咲夜」

「なんでしょうか」

「私に【狩られる】って思ったこと、今までにないかしら?」

「――藪から棒、ですね」

「いいじゃない、私が気になったんだから……で、どうなの?」

「いいえ、と言えば嘘になりますね」

「そう」

「驚かないんですか?」

「全然。だって私も、あなたを【狩りたい】って思ったこと、今までに何回もあるもの」

「……どれくらい、ですか?」

「両手の指で足りないくらい」

「奇遇ですね、私もですよ」




「では、そろそろ行きましょう。早くしないと夕食が冷めてしまいます」

「私にとっては朝食だし、私の料理は冷めないわ」

「あら、私の夕食のことですよ?」

「冗談が過ぎるわよ、咲夜」

「失礼しました」

「……ねえ、咲夜」

「何ですか?」

「狩らず、狩られずの日々も、悪くないわね」

「……そう、ですね」




 ただ狩るだけの日々に飽きた。

 ただ狩られるだけの日々に飽きた。

 だから、私はここに居るんだろう。

 きっと。





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